空華第一四号

¥1,320

A5判
260ページ

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説明

 さまざまなことを考え併せて、今回から「空華文学賞」を募集して、結果を同人誌に掲載することにしました。第一回は、元町月一さんの「マリリーンX」が受賞しました。内容は、誌面を見て下さい。それほど多くの作品が集まったわけではないのですが、面白い作品が多かったです。このような同人レベルの文学賞が、もっとあちこちで開催されて、同人誌文学が活発になることを祈りつつ、この作品を送り出します。
 巻頭には、しかしながら、いつものように短歌を掲載しました。大坪命樹の「梯子坂46」は、アイドルグループのもじりです。歌会にも一首出しましたが、かなり誤解された上にあまり好評ではなかったですね。歌人の方にはあまり受けない歌かも知れません。藍崎万里子の「とんがり山の詩」は、藍崎の初めてと言って良いほどの登山体験が、初々しく新鮮に歌われています。歌人の方はもちろん歌人でない方も、ぜひ御覧になって下さい。
 同人小説は、まず藍崎万里子の「海の鐘、山の鐘」です。夫婦生活におけるちょっとした楽しみを、藍崎のさらなまなざしで捉えています。私小説的ではありますが、まったくの写実ではなく、かなり創作が入っております。藍崎の苦手であった風景描写がふんだんに使われており、読んでいて気持ちが晴れやかに和んできます。
 二番目は、冬月の「マスターMの数学事件簿」です。相変わらずの数学コテコテ小説ですが、随所に苦労のあとが見られ、数学の苦手な方にも判りやくなるよう功夫が作されています。また、ハッピーエンドになっているところに、作家の人生観や希望が出ている気もします。一風変った小説世界を、楽しんでみてください。
 次は、大坪命樹の「可塑のトレース」です。これは登山小説です。といっても、プロの登山家から見たら、ただのトレッキングしかしていないのですが、舞台が山です。そのなかで、モデルになった大坪自身の体験がデフォルメされて語られており、情景がきらびやかな作品となっています。少し長いですが、楽しめます。
 最後は、今回初投稿の深井了の小説です。「恋の道」ですが、どこかシュールな小説世界は、深井文学と言ってもいいものがあります。現実の不確実性への危機感、現実と妄想の混在性、未来への示唆的警鐘、これらの繊細な属性は、深井文学にはよく見られるものです。富山の同人誌の大先輩の深井了の世界を、存分お楽しみください。
 最後は、連載の「そらばなし書評」です。藍崎の「再びの朝」(風見梢太郎著)と、大坪の「六〇〇〇度の愛」(鹿島田真希著)の二つの書評を掲載しました。読書の参考になさってください。
 このような仕上がりの第一四号です。

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