空華第九号

¥1,210

A5判
232ページ

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説明

 空華第九号です。
 表紙デザインをしていただきましたのは、第八号も作成してくださいました、大阪出身の松下みずほさんです。いろいろと作ってくださいましたが、最終的には、同人のみなさんで多数決をして、この表紙に決定しました。写真の、綺麗な緑色にとても合った色合いの美しい装丁になりました。松下さん、ありがとうございます。
 一番はじめに掲載されておりますのが、杜埜不月さんの「春風はやがて」です。前回の第八号で描かれた恋物語の前奏曲のような作品で、さわやかな学生生活を、かろやかなタッチでありながらも、それと対比させるように複雑さを持った内容で、描いてあります。主人公は高校一年生の男の子で、傷付きやすい若さゆえの悩みの数々を、繊細な心で感じながら、友達や大人との関わりを通して解決を探っていこうとする、若々しさあふれた物語です。
 次は、お待たせしました、大坪命樹さんの「心跛」です。「慧可」という有名な禅僧が、人生に悩み、汚い世の中に悩んだあげく、あの大人物である達磨大師に弟子入りしようとして、腕を切り落とすというとんでもない覚悟を示し、やっと入門を許された、という非常にドラマチックな話です。「慧可断臂」という伝説で有名ですが、一説によると史実ではないとも言われています。それを迫力満点の描写で実にうまく仕上げています。
 三番手は、冬月さんの「伝説教師X 第三話大恋愛」です。本当にいつも面白いアイデアの宝庫で楽しませてくれるX先生シリーズですが、今回はそのX先生が恋愛をします。X先生かそれ以上にすごいキャラクターの音楽教師早乙女先生相手にすったもんだを繰り広げます。結婚式の話、新居の話、新婚旅行の話、数学と音楽の話、など、てんこ盛りです。一度読み始めると止まらない展開です。
 最後になりますのが、藍崎万里子さんの「Nという山奥」です。藍崎さんが初めて河出書房新社の文藝賞に出しましたところ、三次選考まで通っていました。藍崎の実家の山をモデルに描かれた、自然の中で自活しようと格闘する夫婦の話です。コミカルな中にシリアスなテーマが隠されており、なかなか読み応えのある作品です、
 巻末は、「そらばなし書評」です。今回は二人になりましたが、大坪命樹の書評は、山野辺太郎著の「いつか深い穴に落ちるまで」です。これは藍崎が応募した第五十五回の文藝賞受賞作です。もう一つは、藍崎万里子書評、稲尾れい著「虫めづるの庭」です。これは大坪や藍崎も応募した第五十二回北日本文学賞受賞作です。二作品とも文学賞受賞作という作者にとってはデビュー作ですが、これらを読むことは我々にとっては非常に勉強になることでした。
 このような作品たちが集うこととなった第九号、どうぞよろしくお願いいたします。

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