空華第一六号

¥880

A5判
376ページ

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説明

 冒頭は、おなじみの空華文学賞です。今回は、式似名さんの「マグニフィカ遊戯」が受賞しました。かなり個性的ですが、視覚的にも美しく、多くの科学的知識をバックボーンにした、象徴的で暗喩的なスペクタクルSF小説です。今までの市販の小説には無いニューテイストの作品ですので、読書好きの方や文学を志す方には、ぜひ味わって読んで戴きたい一品です。われわれの文学賞に、このような作品の応募があり、それを選ぶことが出来たことは、とても誇らしい事実です。
 次に、同人の短歌ですが、いつもながら藍崎万里子と大坪命樹が詠いました。奇しくも二人とも、立山登山に関する歌です。吟行したつもりも無かったのですが、二人で立山に登ったときの想い出が、歌として切り取られています。二人ともそれぞれ異なる視点で歌っているので、見解の相違などが見えて興味深いです。ぜひ、味わってみて下さい。
 三番目は、冬月の「幻のフィールズ賞(後編)」です。前編で、風変わりでマッドサイエンティスト的な性質が描かれた主人公でしたが、その彼がますます珍妙な人生を歩みます。数学の賞の最高峰フィールズ賞を、彼は取ることが出来るのか? 天才と莫迦は紙一重と、往古から言われますが、彼はいずれに属するのだろうか? ラストの意外なオチは、なかなか面白いです。ぜひ、冬月の数学小説をお楽しみ下さい。
 四番目は、藍崎万里子の「ひとりぼっち病」。藍崎万里子の体験談が入っているのか、なかなか身につまされる話です。少しコミカルでまぬけな医者に掛かった「私」は、彼の処方のために症状がおかしくなってしまう。「私」は、先生に翻弄されながらもなんとか元の処方に戻して貰うのだが……。統合失調症患者には良く判る、症状のドリフのタンス的な側面をよく描いた作品です。
 五番目は、大坪命樹の「筆と虹」。女流小説家草木愛香のもとに、ある雨の日現われた不審な男ホセ。彼は、何を思って草木のもとに訪れたのか? ホセは、運命的に周囲の人々を巻き込んで、草木自体を意外な方向に引っ張っていく。ホセは、日本で成功できるのか? 文学と名声に関して、天才と凡人についてなど、いろいろ考えさせられる小説です。外国語も交えた力作です。
 そのほか、風見梢太郎さんのコラムとそらばなし書評も載っております。ぜひ、お楽しみ下さい。
以上のような第一六号でした。

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